KEF R3 Meta 製品レビュー(R3比較、空気録音、測定など)
, by 漆原圭佑, 3分で読み終わります
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KEF R3 Metaの採用技術の説明や50曲以上試聴してのレビュー、R3と比較しての周波数測定結果などを解説します。
R3 Metaの商品ページはこちら!2週間自宅でご試聴のうえ、そのまま残金お支払いいただきご購入いただくことができます!レンタル費18000円/購入金額326,400円!
※本記事はWordpressに以降しました。
https://blog.onsite.audio/kef-r3-meta-review/
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皆様こんにちは、Onsite Audio しけもくです。今回はイギリスのオーディオメーカーKEFより、新作R MetaシリーズのR3 Metaをレビューします。
採用技術や実際に自室で1週間使用してみての感想、そしてLS50 Metaや旧R3との違いや測定結果の比較などをお届けいたします。また空気録音をお聞きになりたい方は文中と文末でご紹介するYouTubeをご覧ください。
なお、私はKEF RシリーズではR300、R3と直近2世代を個人的に所有し聴いてきました。それらの経験も踏まえてレビューします。
まずはじめにR3 Metaに対する私の結論を簡単に述べます。
性能と音楽性の双方が高いレベルで両立している、非常に完成度の高い素晴らしいスピーカーだと思います。人によっては終の1台になりうる製品だと私は感じました。
フラット特性からくるバランスの良さと、解像度定位などの性能の高さからくるナチュラルさは好みやジャンルを選びません。
かと言って高特性製品にまま見受けられる「味気なさ」とはまったく無縁で、その出音は音楽性に溢れており感情を揺さぶる魅力的な音楽を奏でてくれます。この音は多くの方にとって好ましい(少なくとも減点要素の少ない)と感じる音と思われます。
この非常にバランスの取れたR3 Metaがオーディオとしては現実的な価格(363,000円)で購入できるというのは、ハイエンドまでは志向しない方にとって「アガり」の1台になりうると私は思います。少なくとも50万アンダースピーカーの中の候補の1台には間違いなく挙げられるでしょう。
私個人の好みに合致していることもありますが、文句なしにオススメできる1台です。
それでは宣伝を挟んで詳細に入ります。
■■■■■Onsite Audioについて■■■■■
Onsite Audioでは、KEF R3 Metaを実際にご自宅でレンタル試聴頂き、気に入って頂けましたらそのままご購入頂くことができるサービスを提供しています。
レンタル期間は2週間、KEF R3 Metaのレンタル費は15,000円です。気になられた方は是非ご利用ください!
※2023年2月現在、R Metaシリーズの在庫は国内全般で不足しています、在庫切れの場合はご容赦ください
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まずは技術仕様について簡単にご紹介いたします。
R Metaシリーズの技術的な特徴と違い、そして旧R3と同じ点は下記の通りです。
それぞれについて簡単に見ていきます。
旧Rシリーズとの違いでは、MATの採用が最も大きな点です。MATはUni-Qユニット背部に取り付け空気の流れを吸音・制御することで、「ドライバーの裏側からくる不要なサウンドを99%吸収します」(メーカー公式)という技術です。
レビューでもお伝えしますが、このMAT搭載の効果は大きく、雑味のなさ・クリアさなどの性能の向上を聴感上でも感じますし測定でも観測できます。MATは現在のKEFの音を特徴づける主要技術であると言って良いと思います。
なお、ドライバー背面にただ取り付ければ良いという訳ではないらしく、取り付けるスピーカーごとにMAT自体の構造やUni-Qの構造の変更が必要だそうです。
そのため今回搭載された第12世代Uni-QドライバーはMAT搭載と併せたチューニングや変更がなされました。具体的な内容は下記のメーカー公式資料をご参照ください。
今回のRシリーズのMAT搭載により、KEFはQシリーズを除いたパッシブスピーカーは全てMATを搭載することになりました。
なお余談ですが、このMATはACOUSTIC METAMATERIALS GROUPというチームがエアコンの空調ノイズを抑制するために開発していた技術をKEFエンジニアが偶然見つけ、彼らに相談をもちかけて共同開発した技術が用いられているとのことです。
次に旧Rシリーズと同じ点です。新旧2台を並べてみると、外観は全く同じと言ってよいでしょう。
左側が旧R3、右側がR3 Metaです。違いはUni-Qドライバーの印字くらいでしょうか。それ以外の違いはわかりません。
この点については、モデルのバージョンアップにより外観の変化が欲しいと思われる方もいらっしゃるでしょうし、同じ形だからこそ良いと思われる方もいらっしゃると思います。ご家族がいらっしゃる方には、買い替えたことがバレない可能性がある、という点でメリットになるかも???しれませんね。
またベースドライバーは旧RとR Metaで共通です。ただし内部ネットワーク見直しによるクロスオーバーの変更が各機種で行われています(R3 Metaでは400Hz→420Hzに変更)。
KEFは自社開発したシミュレーターにより最適なクロスオーバーの調整を行っているようです。実際、ユニット自体の変更はありませんが内部ネットワークの変更による音への影響は感じましたので、後ほど言及します。
試聴レビューに入る前に、簡単にKEFの音作りの方向性についてご紹介します。
KEFの音作りには「アーティストの意図をそのまま表現する」という開発者の想いがあるようです。すなわちスピーカーはあくまでもソースに込められた音楽を表現するものであり、スピーカー自体に個性は求めないという考え方です。
このKEFのフィロソフィーを意識しつつR3 Metaを実際に試聴してのレビューをしていきたいと思います。また旧R3やLS50 Metaとの比較も行います。
なお、本レビューは展示品を1週間ほど弊社環境で鳴らした感想です。ソースは50曲ほどを視聴しています。
また、空気録音をお聴きになりたい方は下記のYouTubeをご覧ください。全て試聴環境でマイクを使って収録した音源です。
まず一聴して感じるのは、出音の基本性能の高さとナチュラルさ・滑らかさです。これはR300〜R3に通ずるRシリーズの特徴が更にブラッシュアップされた印象で、MATの音質寄与を大きく感じる部分です。KEFの測定に基づいた音作りの哲学がまさに反映されている箇所と言えるでしょう。
土岐麻子さんのSTRIPEは、弾力性のある4つ打ちのベースラインに土岐麻子さんのボーカルと浮遊感のあるシンセサイザーがのってきますが、R3 Metaではボーカルがバシッと中央に定位し、複数のシンセサイザーの浮遊音が左右空中に散りばめられ、低く深くスピード感のあるベースラインがそれらを支えています。ボーカルの子音は自然で刺さりがなく、リバーブの余韻や終わりがはっきりと感じられます。
同じ曲を旧R3で鳴らすと、全体的な傾向は当然近いのですが、高域部分ではやや気になる点があります。シンセサイザーの倍音成分や声の子音、リバーブに僅かな滲みやかすみを感じます。おそらく10kあたりの付帯音でしょうか。
旧R3で感じたこれらの雑味感ですが、R3 MetaではMATの搭載により解消されて、高域〜超高域部分は非常にクリアになっています。このクリアさ、雑味のなさ、ナチュラルさはR3 Metaの大きな音質特徴と言えるのではないでしょうか。
次にスケール感です。これはもう聴いて感じて頂きたい部分です。
まず低域について、ブックシェルフでトップクラスの低域の再生能力を誇ります。メーカー公称では-6dbで38 Hz - 50 kHz、±3dbでは58Hz - 28kHzという数値ですが、これはブックシェルフとしては高い低域再生能力であると言ってよいでしょう。低域の量感は聴いて頂いた際にまず驚くポイントだと思います。
また空間も広いです。そして定位も良いため「広いステージが展開され、しっかりした低音が響き、それぞれの楽器の位置表現が明確にボーカルが前に出てくる」ということになります。まさに広いステージを前に音楽を聴いているような感覚です。音場展開はやや近めなため、迫力もしっかりあります。
これらを踏まえて、このスケール感はブックシェルフの中でもトップクラスと言ってよいのではないかと思います。弊ショップでは扱いはありませんがR9 MetaやR11 Metaになると更に広大なスケール感を獲得できるため、十分な広さのリビングユースであればR9 Meta、R11 Metaは素晴らしい選択肢だと思います。
最後にソースへの対応力と音楽性です。この点が今回のR3 Metaで最も感動した点です。
まず正直に申し上げます。私は旧R3を使用してましたが、個人的な好みとしてはLS50 Metaの方が好みでした。
確かにR3はフラット傾向で性能も高いためリファレンスには向いているのですが、ソースにやや厳しく粗い音源はあまり楽しむことができなかったり、あるいはもう少し音楽性が欲しいと感じるシーンがままありました(なのでアクセサリーで色々と工夫をする必要がありました)。
その点、LS50 Metaは低域再生能力やスケール感ではR3に劣るものの、高域の表現力がよく音楽性も豊かなため、聴いていて楽しいのはLS50 Metaだったというのが私の正直な感想です。
その評価がこのR3 Metaでは吹き飛びました。R3の性能の高さとLS50 Metaの音楽性が見事に融合しているのです。R3 MetaはLS50 Metaをほぼ全ての点で上回る上位互換と言ってよいと思います。
ポイントとして重要なのは2点です。1つ目はソースへの対応力が高く、どんなソースでも一定以上のクオリティで楽しく聴けること。そして2つ目は高い音楽性を有するため没入感が高くいつまでも音楽を聴きたくなる体験ができるということです。これらは測定では観測できませんが、非常に大きな進歩だと思います。
1つ目のソースへの対応力について。例として、「海苔音源」と呼ばれる音圧を高めた音源が現代のポップスでは多く存在しますが、これらの楽曲をHiFiオーディオで再生する場合、オーディオ側の性能の高さが仇になり、コンプ感が強調された詰まりを感じる出音になりあまり楽しい体験ができなくなる、というケースがあると思います。
それは確かに「音源をつまびらかにする」という点では正しい再生なのですが、求めているのは音楽を楽しく聴くことなので、できればどんな音源も楽しい体験をしたいというのが私の考えです。
R3ではそれが難しい音源がいくつもありました。再生能力が高いからこそ音源の粗もそのまま出してしまい、その粗が気になって楽しく聴けない。結果として音質が良い音源のみを聴いてしまい、過去に聴いていた音源から遠ざかってしまう、そんな状況です。
R3 Metaを一聴して感じたのは「とにかく楽しい!」という音楽を聴く喜びです。解像度が高い、定位が良い、フラット帯域で滑らか、でも楽しい。なにを聴いても楽しい。50曲ほど聴きましたが本当にどんな音源を聴いても楽しかったです。ジャンルを選ばないという意味でもこれはなかなか得難い体験でした。
繰り返しになりますが、R3 Metaの素晴らしい点は、基本性能が高いため音源の再現性が高い、しかしながらソースの粗に対して神経質ではないためネガティブに鳴らず、あくまでも音楽的な訴求を表現していることです。その結果として、音楽に深く没入することができ、いつまでも聴いていたい音楽体験を行うことができます。
まさに、KEFのフィロソフィーである「アーティストの意図をそのまま表現する」という体験を体現しているのでは、と感じます。是非、一度ご体験頂きたい音質だと胸を張って言えるスピーカーです。
※なおここまで絶賛していますが、私自身好きなスピーカー・メーカー様はたくさんありますし「KEFだから素晴らしい」と言う意図は一切ございません。今後様々なスピーカーもレビューしていきますので何卒よろしくお願いいたします。
次に気になる点です。
フラットかつナチュラルな音質ですが、尖った個性を感じる音色ではありません。そのためスピーカーに個性を求める方にとっては物足りなさを感じる可能性があります。私自身、フラット系のスピーカーも好きですし、スピーカー自体を楽器として捉えるような個性的なスピーカーもどちらも好きなためこのように評価していますが、好みによっては「味気ない」と感じられる方はいらっしゃるでしょう。
ただし、前述しましたがフラット傾向といえども音楽性は十分あります。個性的ではありませんがつまらない音ではない、というのはお伝えしておきたい点です。
次に、サイズが大きいことです。メーカー公称の「H422 x W200 x D336mm 、12.4kg/本」はブックシェルフのなかではそれなりに大きいサイズで、少なくとも机の上に乗せるのは困難なサイズと思われます。ある程度設置場所は余裕をもたせる必要があるかもしれませんし、取り回しは良い方とは言えないと思います。これはスケール感とのトレードオフで致し方ない部分でもあります。
最後に重要な点として、上流のクオリティをそのまま反映することです。誤魔化しが効きにくいと言っても良いかもしれません。
今回、アンプを10機種程度と組み合わせて試してみましたが、上の価格のSoulnote A-2やNuPrime AMG STAでは素晴らしい音を奏でてくれましたし、価格を下回るクラスのTEAC AP-505やSoulnote A-0などとでも良く鳴ってくれました。いずれにしてもアンプの特徴が良くわかる鳴り方です。
ただし、エントリークラスやミドルクラスの中華アンプとの相性はよくありませんでした。これまでに述べた音楽的な楽しさがスポイルされてしまう印象です(このスピーカーと中華アンプを合わせる方がどれほどいらっしゃるかとは思いますが)。4Ωのため駆動力も少し求められるかもしれません。
アンプに素直に反応するというのは、拘った分だけ応えてくれるという意味でもあり長所とも言えると思いますが、ある程度上流を奢る必要がある(できれば価格なりには)という点は意識して頂いた方がよいかと思います。
それでは最後にR3 MetaとR3の違いを測定結果から見ていきましょう。
なお、ここでご紹介する測定方法は、規格に則った正規・正確な測定方法ではありません。あくまでも弊社同一環境での測定による違いを観測するためのものであるという点は予めご承知おきください。
測定条件は、ツイーターより7cm中心軸上とベースドライバー7cm中心軸上で、Room EQ Wizard(REW)の測定機能により近接測定しています。測定マイクはフラットで近接効果がでないEarthworks M23を使用しています。
また周波数比較ではUni-Qとベースドライバーの測定結果をクロスオーバーである420Hzと400HzでREW機能により合成しています。
なお、周波数特性とTHDを掲載いたしますが、これらは音の一指標にすぎず、必ずしも音質の良し悪しを語るものでは無いという点は予めご承知おきください。
まず、周波数特性の比較です。赤字がR3 Meta、黒字がR3です。
両者は基本的にとてもよく似た周波数特性です。低域に大きな膨らみがあり、クロスオーバー付近の400Hzあたりからフラットに高域まで伸びていっています。
ただ、第12世代Uni-QとMAT搭載が理由か、赤のR3 Metaはよりフラットで2kから6kまで伸びていますが、R3はやや盛り上がっていくという高域特性の違いがあります。このあたりの帯域は女性ボーカル上の帯域からリバーブの余韻やハイハットの響きなどの高域成分です。ナチュラルさ・引っ掛かりのなさに影響しているかもしれません。
また、R3 Metaは10kあたり超高域成分にやや下がりが見られます。これはいわゆる倍音の帯域です。華やかさなどに関連する部分ですが、この点においてはR3 Metaに華やかさがないといったネガティブは感じませんでした。
なお余談ですが、R3 MetaおよびR3の周波数特性は、いわゆるスピノラマと呼ばれる測定方法によるPreference Ratingという評価スコアで高いスコアを獲得できる周波数特性と思われます。
KEF自体は積極的に測定による製品開発を行っており、各製品で高いPreference Ratingを獲得していますので、この周波数特性は納得する内容です(念の為R3は海外サイトの測定結果と照らし合わせましたが、概ね似た内容だったため大きく誤ってはいないと思います)。
次に歪み成分を表すTHDを比較します。THD+Nを出したかったのですが、出せなかったのでTHDでの比較になります。なお、合計波形では歪み成分の比較は出来ないため、Uni-Qの測定結果の比較となります。
赤がR3 Meta、灰色がR3です。少し見づらいのはご了承ください。またUni-Qの測定結果のため400Hz以上をご参照ください。
基本的には大きな違いはありませんが、先程と同様に1k以上からの高域成分には違いが見られます。R3 MetaはR3に対して1k以上の広い帯域で1-2db程度の改善が見られます。これは聴感上で感じる付帯音の少なさや雑味のなさに繋がっているように思います。
なお、これらの測定結果は、近日KEFよりホワイトペーパーが出るかと思います。ご興味ある方は是非ご覧ください。
ここまでご覧頂きましてありがとうございました。
冒頭の結論に戻りますが、KEF R3 Metaは特性と感性が両立する、非常に素晴らしいスピーカーだと個人的には感じました。ご興味を持たれた方のご参考になれば幸いです。
なお、弊ショップOnsite Audioは「自宅で試聴 そのまま購入」をコンセプトに、2週間のレンタル提供からそのままご購入頂けるサービスを提供しています。R3 Metaもご用意がございますのでご興味持たれた方は是非ご自宅でご体験ください。
また、本内容はYouTubeでもご紹介しております。よろしければご覧ください。
それでは皆様、良きオーディオライフを!